歯周病

歯周病にならないためには?予防方法を解説します

歯周病は生活習慣病として位置づけられており、日本では成人の3人に2人が歯周病ともいわれています。

歯茎の炎症や口臭だけにとどまらず、進行すると歯を失ってしまうこともある歯周病。

歯周病にならないためにはどうすればよいのでしょうか。

 

今回は、歯周病の予防方法について解説していきます。

 

歯周病予防にはプラークコントロールが大切

 

歯周病の直接の原因はプラーク(歯垢)です。
プラークは生きた細菌の塊で、歯磨きが充分でないとプラークが歯の表面や歯と歯茎の境目に溜まっていきます。

 

プラークには1㎎あたり1億個以上もの細菌が含まれ、プラーク中の歯周病菌が歯の周りの歯茎で増殖すると炎症が生じ、歯周病を引き起こします。

 

歯周病菌は常在菌として口腔内に存在するので、完全に除去することはできません。
しかし、歯周病はプラークコントロールにより予防できます。

 

プラークコントロールとは、プラークの除去と歯への再付着を防ぐことで、虫歯や歯周病の原因となる細菌を減らすことをいいます。
プラークコントロールは、自分自身で行うケアと歯科医院で行うプロフェッショナルケアに大別されます。

 

歯周病にならないためには、適切なプラークコントロールを行い、細菌が繁殖しにくい口内環境を維持することが大切になります。

正しい歯磨きで歯周病を予防しよう

 

歯周病予防で最も重要なのは、毎日のセルフケアでプラークを取り除くことです。

 

毎日当たり前のように行っている歯磨きですが、ただ歯を磨けばいいというわけではありません。しっかり磨いているつもりでも汚れが残ってしまっていることもあります。

 

正しい磨き方を身に付けてセルフケアの質を高めていきましょう。

 

ここからは、基本的な歯ブラシの持ち方と磨き方について解説します。

歯ブラシの持ち方

歯ブラシの持ち方は大きく分けて、鉛筆を持つように持つ「ペングリップ」と手のひらで握るように持つ「パームグリップ」があります。

 

歯ブラシは基本的にペングリップで持つことをおすすめします。
この持ち方は余計な力が入りにくく、歯ブラシを小刻みに動かせるため丁寧に磨くことができます。

 

ペングリップで持つことが難しい方は、パームグリップで持ち、軽い力で優しく磨いてください。

磨き方

1か所につき20回程度を目安に、歯ブラシを小さく動かしながら磨きます。

 

歯を磨くときの適切なブラッシング圧は100~200g程度といわれています。
ブラッシング圧が強いと歯や歯茎にダメージを与えるだけでなく、磨き残しの原因になるので、歯ブラシを当てたとき毛先が広がらないくらいの力で磨いていきます。

 

歯ブラシの当て方は、歯面に垂直に当てるのが基本です。
歯周ポケットのプラークを落とすときは、歯と歯茎の境目に斜め45度の角度で当てます。

 

前歯の裏や歯並びが凸凹している部分など歯ブラシが当てにくいところは、歯ブラシを縦に当てたり、歯ブラシのつま先いやかかとを使うなど、歯ブラシの毛先が届くよう工夫しながら1本ずつ磨きましょう。

 

決まった場所から磨くようにすると磨き忘れや磨き残しが少なくなります。

歯と歯茎の境目を磨くときにおすすめの磨き方バス法

バス法とは、歯ブラシを歯と歯茎の付け根あたりに斜め45度の角度であてて、小刻み(2~3mm幅程度)に振動させるように動かしながら磨く方法です。

 

バス法は、歯周ポケット内の汚れを掃除できるため、歯周病予防に効果的です。
歯茎のマッサージ効果もあるので、歯茎に炎症が起きているときに行うのもおすすめの磨き方です。

歯の表面を磨くときにおすすめの磨き方スクラビング法

スクラビング法は、歯ブラシを歯面に対し垂直に当てて小刻み(5~10mm幅程度)に動かしながら磨く方法です。
歯の内側はバス法と同じように、歯ブラシを斜め45度に傾けて当てると磨きやすいです。

 

スクラビング法は、歯の表面や歯間部の清掃効果が高いため、虫歯予防に効果的です。

 

歯の磨き方は「バズ法」や「スクラビング法」以外にもいろいろな方法があります。
お口の中の状況は一人ひとり異なるので、一度かかりつけの歯科医院でブラッシング指導を受けると自分に合った磨き方がわかります。

プラークの溜まりやすいところは重点的に

次のような場所はプラークが付きやすいです。

  • 歯と歯の間
  • 歯と歯茎の境目
  • 奥歯のかみ合わせ部分
  • 歯並びの悪いところ
  • 背の低い親知らず
  • 矯正装置の周り

力の入れすぎに注意しながら、歯ブラシの毛先がしっかり届くよう意識して磨きましょう。

就寝前は特に丁寧に歯磨きをしましょう

疲れていると就寝前に歯磨きをするのが面倒になってしまうこともあるかと思います。
しかし、寝ている間が一番虫歯や歯周病のリスクが高まります。

 

就寝中は唾液の分泌量が少なくなり、お口の中が乾燥した状態になります。
唾液が減ると唾液による殺菌作用や自浄作用が働きにくく、歯周病菌や虫歯菌が増殖しやすくなってしまいます。

 

朝起きて口臭が気になったり、お口の中がネバネバするのは、寝ている間に細菌が増えたことが原因です。

 

食べかすやクラークが残っていると、それを餌に細菌が増えていくので、就寝前の歯磨きは特に念入りに行いましょう。

 歯磨きに使用するアイテム選びも重要

 

プラークを効率的に除去するには、歯ブラシや歯磨き粉など歯磨きで使用するアイテム選びも重要です。

歯ブラシの選び方

歯ブラシは歯磨きのマストアイテムです。
以下で紹介する5つのポイントをふまえて自分に合った1本を選びましょう。

①毛の硬さ

市販の歯ブラシには、「かため・ふつう・やわらかめ」の3種類があります。
一般的には「ふつう」または「やわらかめ」の歯ブラシがおすすめです。
硬さはメーカーによって違いがあるので、歯茎の状態や好みに合わせて選択しましょう。

②ヘッドの大きさ

大きさの目安は上の前歯2本分です。
ヘッドが大きいタイプは一度に広範囲を磨けるのが魅力ですが、ヘッドが大きすぎると奥歯や細かい部分に毛先が届きにくく磨き残しが多くなります。
ケアに時間はかかりますが、磨き残しをなくすには少し小さめのヘッドの歯ブラシがおすすめです。

③毛先の形

歯ブラシの毛先の種類は主に「ラウンドカット毛」「テーパード毛」の2種類があります。
ラウンドカット毛は毛先が丸く加工されています。歯茎を傷つけにくく、歯の表面のプラークを効率よく除去できるのが特徴です。
テーパード毛は先端に向かって毛先が細くなっているのが特徴です。歯周ポケットに毛先が届きやすいので歯周病ケアに効果的です。

④ブラシの形状

ブラシの形状には「フラットカット」と「山切りカット」があります。
フラットカットは、歯と歯茎の境目や歯面に均等に当たり、プラークを除去しやすいのでおすすめです。
山切りカットは、歯と歯の間を磨きやすいように工夫されていますが、歯面に均等に毛先が当たらないためプラークが除去しにくいというデメリットがあります。

⑤歯ブラシの持ち手

まっすぐなのものやカーブしているものなど持ち手の形態には様々なものがあります。
太めの持ち手はしっかりと握れるため、握力が弱い方やお子さま、高齢の方におすすめです。
細めの持ち手は、ペングリップで持ちやすく、細かく動かせるので、基本的にはまっすぐで細めの持ち手の歯ブラシをおすすめします。
強く磨いてしまう方は、細めの持ち手の歯ブラシを使うと力の入れすぎを防げます。
握ってみて余計な力が入らず、手にフィットするものを選びましょう。

歯磨き粉の選び方

歯周病予防に効果的な薬用成分が配合されている歯磨き粉を使用するのもおすすめです。

 

歯周病に効果のある成分には以下のようなものがあります。

殺菌成分(プラーク中の細菌の増殖を抑制)

イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンゼトニウム、トリクロサン、ラウロイルサルコシンNa(LSS)など

抗炎症成分(腫れや出血などを引き起こす歯茎の炎症を抑制)

トラネキサム酸、 β-グリチルレチン酸、 ε-アミノカプロン酸、オウバクエキスなど

血流改善成分(歯茎の細胞を活性化させ、組織の修復を促す)

トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)、アラントインなど

収れん作用(歯茎を引き締める)

塩化ナトリウムなど

 

歯磨き粉には主にペースト・ジェル・フォームタイプのものがあります。
ペーストタイプは、最もポピュラーなタイプの歯磨き粉です。研磨剤が含まれている商品が多いので、プラークだけでなく歯の着色汚れも落とすことができます。

 

ジェルタイプは、やわらかく滞留性の高いジェルが細かいすき間にも浸透し、薬用成分が歯に密着しやすい処方になっています。研磨剤や発泡剤が含まれていない低刺激な商品が多く、歯磨き粉が泡立たないため長時間磨くことができます。

 

フォームタイプは、歯磨き粉がきめの細かい泡状になっているので、口腔内全体に薬用成分が素早く行き渡るのが特徴です。

 

歯磨き粉によって含まれている成分や形状は異なります。目的や歯茎の状態に合わせて歯磨き粉を選択しましょう。

補助的清掃用具も活用しよう

歯ブラシだけで落とせるプラークは60%程度ですが、補助的清掃用具を併用するとプラークの除去率を80~90%程度まで高めることができます。

 

補助的清掃用具には以下のようなものがあります。

 

  • デンタルフロス
  • 歯間ブラシ
  • タフトブラシ

デンタルフロス

歯と歯の間のプラークを効率よく取り除くことができます。
デンタルフロスには「ホルダータイプ」と「ロールタイプ」の2種類があります。

 

①ホルダータイプ(糸ようじ)

ホルダータイプは持ち手がついて使いやく、フロス初心者の方におすすめです。
ホルダータイプのフロスには「F字型」と「Y字型」があります。
F字型は前歯、Y字型は奥歯の使用に適しています。

 

②ロールタイプ

ロールタイプのフロスは必要な長さに切り取り、指に巻き付けて使用します。
ワックス加工がされているフロスは歯間に通しやすいので、フロスに慣れていない人や歯間が狭い人におすすめです。
ワックス加工がないタイプや唾液で膨らむタイプのフロスもあります。

歯間ブラシ

歯間ブラシは、歯と歯のすき間の汚れを取り除くための小さなブラシのことです。
歯と歯の間が空いている場合は、フロスより歯間ブラシの方が効率的にプラークを除去できます。

 

歯間ブラシの形には「L字型(アングル)」と「I字型(ストレート)」の2種類があります。L字型は奥歯、I字型は前歯の清掃に適しています。

 

ナイロンを使用したワイヤータイプ、ゴムやシリコンを使用したラバータイプと、歯間ブラシは素材によってもタイプが分かれます。
ワイヤータイプは歯と歯の間に入れやすく、プラークの除去効果が高いです。
ラバータイプは歯茎を傷つけにくく、歯茎のマッサージ効果があります。

 

歯間ブラシは、基本的にSSSS・SSS・SS・S・M・Lの6サイズあります。
歯間ブラシのサイズはメーカーによってサイズ展開が異なるので、歯と歯のすき間の広さに合わせて選択しましょう。

 

フロスや歯間ブラシは自己流の使い方をすると歯茎を傷つけてしまう可能性があるため、歯科医院で正しい使い方を聞いたうえで使用するようにしてください。

タフトブラシ

タフトブラシは、毛束がひとつでできている小さなヘッドの歯ブラシのことです。
タフトブラシはピンポイントに汚れを落とすことができるため、歯ブラシでは届きにくい奥歯や歯並びが悪い部分の清掃、歯と歯の境目のプラークを効率よく除去できます。

 

補助的清掃用具も活用してプラークをしっかり除去していきましょう。

歯周病予防には歯科医院でのプロフェッショナルケアも大切

 

どれだけ丁寧に歯を磨いていても、磨き残しが全くない人はいません。
歯磨きで落としきれなかったプラークが、歯周ポケット内に溜まっていくと歯周病の原因になります。

 

歯周病予防のためには、歯科医院で定期検診・クリーニングを受けることも大切です。

 

歯周病は進行するまで自覚症状がないことも多いです。
定期的に歯科医院を受診すると、お口の中がきれいになるだけでなく、歯周病を早期に発見して治療できるといったメリットもあります。
また、定期検診・クリーニングを受けると歯の健康に対するモチベーションアップにつながります。

 

定期検診・クリーニングの頻度は人によって異なりますが、3か月に1回程度が目安です。

生活習慣を見直してみよう

 

歯周病は生活習慣病のひとつなので、生活習慣も関係します。

 

生活習慣が乱れると免疫機能に悪影響を与え、歯茎が炎症を起こしたり、歯周病を発症しやすくなってしまいます。
セルフケアやプロフェッショナルケアによりプラークを除去するとともに、次の4つの生活習慣を改善することも重要です。

  1. 食事
  2. 喫煙
  3. ストレス
  4. 睡眠

それぞれ解説します。

①食事

偏った食事は免疫力を低下させます。
栄養素は単独で働くのではなく、それぞれが助け合って効果を発揮します。
免疫機能を整えるためには、穀類、肉・魚・卵・豆などの食品から、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取することが大切です。
歯周病菌や虫歯菌は糖分が大好物で、糖の摂取が多いと虫歯や歯周病のリスクを高めてしまうので注意しましょう。

 

また、食事はよく噛んで食べましょう。
食事をよく噛んで食べると唾液が多く分泌され、自浄作用によりプラークを付きにくくしたり、食後に酸性化した口腔内を中性に戻し、歯の再石灰化を促進してくれます。

②喫煙

喫煙によってニコチンなどの有害物質が体内に取り込まれると免疫力が低下し、細菌感染を起こしやすくします。そのため、非喫煙者と比べると歯周病になりやすかったり、歯周病が悪化しやすくなります。喫煙は歯茎の修復機能も低下させるので治療効果も妨げられてしまいます。

 

また、喫煙は歯周病を気付きにくくさせます。
タバコに含まれるニコチンの血管収縮作用により、歯茎の血流を悪くなり歯茎の腫れや出血が抑えられるためです。

 

禁煙をすると免疫や細胞の働きが正常に戻っていくので、歯周病のリスクを下げたり、治療効果を上げることができます。

③ストレス

人はストレスがかかると交感神経が優位になり唾液の分泌量が減少するため、唾液の持つ殺菌作用や自浄作用が低下し、歯周病の原因菌が増加しやすくなります。

 

また、慢性的なストレスにより持続的に交感神経が優位に立つと、コルチゾールなどのストレス関連物質が増加するため、免疫活動を担うリンパ球の働きが抑制され歯周病に影響を与えます。

 

ストレスが溜まると気持ちに余裕がなくなってしまい、バランスのとれた食事を用意したり、丁寧に歯磨きをする元気がなくなることもあったりと、口内環境を悪化させやすくしてしまうので、趣味や運動でリフレッシュする時間をつくるなど、自分なりのストレス対処法を実践して、ストレスをうまく解消していきましょう。

④睡眠

睡眠は、日中の活動で傷ついた組織を回復させるための時間です。
睡眠不足が続くと免疫細胞が活性化されず、身体の抵抗力が下がるのでウイルスや細菌に感染しやすくなり、歯周病にもかかりやすくなります。

 

睡眠不足は、血糖コントロールも悪くさせ糖尿病のリスクを高めます。
糖尿病と歯周病は相互に悪影響を及ぼし合う恐れがあるので、注意が必要です。

 

睡眠にはストレスを軽減させる効果もあります。
質の良い睡眠を取るために、リラックス方法を工夫してスムーズに眠りやすい環境を整えましょう。

 

生活習慣を見直すことは歯周病だけでなく、ほかの生活習慣病の予防にもつながります。

 

いきなり生活習慣を変えるのは難しいので、できることからトライして徐々に生活習慣を改善させていきましょう。

まとめ

ここまで、歯周病の予防方法について解説してきました。

 

歯周病予防には

 

  • 毎日のセルフケア
  • 歯科医院での定期検診・クリーニング
  • よい生活習慣づくり

が大切です。

 

年齢を重ねても健康で楽しい暮らしを継続するために歯周病予防に取り組んで、大切な歯を歯周病から守りましょう。

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