歯周病

歯がグラグラするのは歯周病?ぐらつく原因や対処法を紹介

食べ物を噛むと歯がグラつく、舌で押すと歯が動いている感覚があるなど、歯がグラグラすると心配になりますよね。

 

大人の歯が動くように感じるときは、お口の中でトラブルが起こっているサインです。

お口の中にどのようなトラブルがあると歯がグラグラしてしまうのでしょうか。

今回は、歯がグラグラする原因と治療法について解説します。

 

歯がグラグラするのは歯周病(歯槽膿漏)が原因かも

 

歯周病は、日本人が歯を失う原因の第1位となっています。

打撲や外傷、虫歯といったトラブルに心当たりがない場合、歯がグラグラするのは歯周病が原因である可能性が高いです。

 

ここでは、歯周病で歯がグラグラする理由を解説していきます。

歯周病になるとどうして歯がグラグラするの?

歯は、歯茎の下にある「歯槽骨」という骨によって支えられています。

歯槽骨は歯の根っこをしっかりと包んで、歯を支える土台の役割をしてくれています。

 

しかし、歯周病が進行すると炎症により歯槽骨が吸収されてしまい、歯が支えきれずグラグラするようになります。

 

健康な歯もわずかに動きます(生理的動揺といいます)が、歯周病による歯の動揺は歯を支える土台がもろくなっているため、揺れ幅が大きくなったり、左右、上下など揺れる方向が広くなります。

 

軽度の歯周病であれば歯がグラつくことはないので、歯がグラグラするということは歯周病がかなり進行している状態です。

骨吸収のメカニズム

身体は常に古い細胞と新しい細胞を入れ替えています。骨も同様に「吸収」と「形成」を繰り返して日々生まれ変わります。

 

「骨吸収」とは、破骨細胞により弾力や硬さを失った古い骨が分解され、壊されることをいいます。一方、新しく骨が作られることを「骨形成」といい、破骨細胞により壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を形成します。

普段は「破骨細胞」と「骨芽細胞」のバランスが保たれているので、健康な骨が維持されています。

 

ところが、破骨細胞は様々な理由によって活性化します。

何らかの原因により破骨細胞の働きだけが活性化すると、骨の吸収が形成を上回り「骨吸収」と「骨形成」のバランスが崩れ、骨をもろくしてしまいます。

 

 

口腔内で歯周病菌が増殖すると、身体は炎症を起こして細菌を排除しようとします。このとき炎症性物質が分泌されますが、炎症性物質が過剰に産生されると健康な歯周組織も攻撃してしまうので歯槽骨が破壊されます。また、歯周病菌が出す内毒素も歯槽骨の吸収に影響を与えます。

 

歯周病により慢性的に炎症があると、炎症性物質と内毒素の増加により破骨細胞が活性化され、骨吸収が促進されるため歯槽骨が失われてしまうのです。

グラグラしている歯は抜歯するしかないの?

 

「歯がグラグラする=抜歯」ではありません。

歯がグラグラしていても、歯周病治療と正しいセルフケアにより、しっかりプラークコントロールができれば、抜歯を回避できることもあります。

 

ただし、治療が見込めない状態の場合は抜歯を避けられないケースもあるので、気になる症状があるときはできるだけ早く歯科医院を受診しましょう。

重度の歯周病(歯槽膿漏)の症状

歯周ポケットの深さが6mm以上になると、重度歯周病(歯槽膿漏)と呼ばれる状態になります。重度まで進行すると歯周病でみられる症状が顕著になっていきます。

 

重度歯周病は、不快感があったり、食事がしにくくなるなど日常生活に影響するだけではなく、全身の健康にも悪影響を及ぼします。

 

重度歯周病の主な症状

  • 口臭が強くなった
  • 歯肉からの出血がひどい
  • 歯茎から膿が出る
  • 歯と歯のすき間が目立つ
  • 歯茎がブヨブヨする
  • 食べ物を噛むと痛い
  • 歯がグラグラする
  • 歯が長くなった気がする

重度歯周病の治療

 

歯周病治療は以下の方法で行われます。

 

重度歯周病の治療は、治療方法が多岐に渡ります。患者さん状態や希望などに合わせて一人ひとり最適な治療計画が作成され、話し合いながら治療が進められます。

歯周基本治療

歯周基本治療は、歯周病の原因菌を排除して歯周組織の炎症を改善させ、その後の歯周治療の効果を高めるための基本的な原因除去治療で、すべての患者さんに実施される治療です。

 

歯周基本治療は、プラークコントロール、スケーリング・ルートプレーニング(SRP)、プラークリテンションファクターの除去、咬合調整、暫間固定、抜歯などを行います。

徹底してプラークや歯石などの汚れを取り除くことで、清潔な口内環境をつくっていきます。

歯周外科治療

歯周基本治療をしても深い歯周ポケットが残っている場合や歯周病によって失われてしまった歯周組織を再生させたい場合、必要な部分に対して歯周外科治療が行われます。

 

歯周外科治療は、「組織付着療法」「切除療法」「歯周組織再生療法」「歯周形成手術」に大別されます。

 

歯周外科治療は、プラークコントロールが良好でなければ行うことができません。正しいセルフケアや生活習慣の改善を行い、清潔な口腔内を維持しておく必要があります。

口腔機能回復治療

口腔機能回復治療は、歯周病によって失われた口腔機能(咬合・咀嚼・審美・発音機能等)の回復させるための治療です。

 

歯周基本治療や歯周外科治療が終了したら、口腔機能回復のため補修・補綴治療、インプラント治療、矯正治療などが行われます。

 

口腔機能回復治療は、かみ合わせや咀嚼機能、審美性を回復させるだけでなく、長期的に歯周組織を安定させるために重要な治療です。

歯周病以外で歯がグラグラする原因

 

歯がグラつく原因には、歯周病以外にも以下のようなことが挙げられます。

  • 一部の歯に過度な力がかかっている場合
  • 歯の根が割れている場合
  • 歯の根の先に膿が溜まっている場合
  • 歯を強くぶつけた場合
  • 被せ物の不具合

一部の歯に過度な力がかかっている場合(咬合性外傷)

咬合性外傷には、一部の歯に強い力が加わることによって歯周組織を傷つけてしまう「一次性咬合性外傷」と歯周病の進行によって起こる「二次性咬合性外傷」があります。

 

噛んだときの痛み、歯茎の腫れ、知覚過敏、詰め物が外れる、顎の関節の痛みなどの症状があり、咬合性外傷は歯周病を加速させる原因にもなります。

 

一次性咬合性外傷は、歯周病になっていない健康な歯周組織に起こる外傷のことをいいます。歯ぎしりや食いしばり、かみ合わせが悪いことが原因で一部の歯に過度な力がかかると、歯の揺れや歯槽骨の吸収が起きます。

 

一次性咬合性外傷では、咬合調整や詰め物・被せ物の調整、マウスピースの装着といった治療を行うことで咬合力を緩和します。

 

二次性咬合性外傷は、歯周病により歯周組織が破壊された結果、歯槽骨が減少することで起きます。歯を支える力が弱くなっていると、正常な咬合力でも耐えることができず歯が大きく揺さぶられます。

 

二次性咬合性外傷では、歯周病治療を行い症状を安定させます。また、咬合調整やマウスピースによる咬合力の緩和もあわせて行われます。

歯の根が割れている場合(歯根破折)

歯根部分にヒビが入ったり、割れてしまった状態のことを「歯根破折」といいます。

支えとなる歯根が割れているために歯がグラグラします。

 

症状には、歯茎の痛みや違和感、歯茎に膿の出口(サイナストラクト)ができる、被せ物が外れやすいなどがあります。

 

治療方法としては、亀裂の入っている場所・程度によって歯根破折保存治療により歯を残せることがありますが、抜歯となるケースも多いです。

 

歯根破折は、抜髄(歯の神経を取る処置)をしている歯に起こりやすくなります。

そのほかにもブリッジの土台となっていたり、歯ぎしり・食いしばりにより歯がもろくなっている部分にも発生します。

 

歯の根っこは歯茎に覆われているため割れたことに気づきにくく、神経を取り除いている場合には痛みを感じにくい傾向があります。

歯の根の先に膿が溜まっている場合

歯根内部に蓄積している細菌により歯根の先に炎症が起き、歯槽骨が溶かされてしまうと歯がグラつくことがあります。

膿が溜まっている場合「根尖性歯周炎」と「歯根嚢胞 」に大きく分けられます。

根尖性歯周炎

根尖性歯周炎は、歯の根尖の周りにある歯周組織に起きる炎症をいい、主に細菌感染が原因で起きます。

 

歯の中には神経(歯髄)が通っていますが、虫歯などが原因で歯の神経に細菌が入ると炎症が起こり「歯髄炎」になります。歯髄炎を放置すると、歯の根っこの先に膿が溜まる「根尖性歯周炎」になることがあります。

 

慢性と急性に分けられ、急性根尖性歯周炎では強い痛みや歯茎の腫れ、膿が出るなどの症状がありますが、慢性尖性歯周炎では症状が緩やかになります。

 

根尖性歯周炎を治療する際には、根管治療が行われます。

根管内にある神経や血管を除去してから、根管をきれいに洗浄・消毒し、根管内への細菌の侵入を防ぐために専用の薬剤を充填します。根管の治療が終わったら、被せ物の治療をします。

歯根嚢胞

根尖性歯周炎を放置して進行すると、歯根の先端部に膿の袋ができます。これを「歯根嚢胞」と呼びます。

 

症状には、歯が浮いた感じがする、体調不良のときに痛みが生じるなどがありますが、自覚症状がないことも多く、レントゲンで発見されることも珍しくありません。

 

根管治療で改善することもありますが、根管治療で治らないものや大きいものは摘出します。原因となった歯を残せない場合は、抜歯するとともに嚢胞が摘出されます。

 

歯や骨がしっかりしている場合には、歯茎を切開して嚢胞を摘出することで歯を温存できる場合もあります。

歯を強くぶつけた場合(歯の亜脱臼)

転倒や衝突で強い衝撃を受けたことにより、歯がグラグラすることがあります。

歯が完全に抜けないで「歯がグラグラする」「歯の位置がずれる」などの症状があることを「亜脱臼」といいます。

 

治療では、まずレントゲンを撮って歯の根の状態や周りの骨の状態を確認します。

動揺が軽度の場合は、安静にして経過観察が行われます。

 

歯の揺れが大きい場合や噛むと痛んで食事がうまく取れないような場合、歯の固定を行い回復を待ちます。固定期間中は、安静にして歯を清潔に保つことが大切です。

被せ物の不具合

治療した歯が再度虫歯になったり、接着剤の劣化などで被せ物と歯の接着が悪くなると、歯がグラグラしているように感じることがあります。

 

状態によってそのまま付け直せることもありますが、虫歯になっていたり被せ物などが劣化している場合には、再度治療が行われます。

 

被せ物の不具合を放置すると、虫歯を進行させたり、歯が割れてしまうことがあります。歯が割れてしまうと抜歯が必要なこともあるので、被せ物に違和感があるときは早めに歯科医院で診てもらいましょう。

治療を受ける前に注意すること

 

歯がグラグラしていると気になって指や舌でつい触ってしまいがちです。

動かすと症状を悪化させることになるので、できるだけ触らないようにしてください。

 

歯が動揺している場合、強い痛みが伴うことがあります。治療を受けるまでの間に痛みが強いときは、市販の痛み止めを服用すると痛みを軽減できます。

 

また、食事をする際はグラついている歯をできるだけ使わないようにして、ゆっくり咀嚼します。固いものや歯にくっつきやすい食べ物は避けるようにしましょう。

 

 

歯がグラグラしているということは、歯や歯茎の状態が悪いサインです。

そのままにしておくと治療が大変になることもあるので、大人の歯がグラグラしているときは早めに治療を受けましょう。

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